「営業のデータ、まだExcelで管理してるの?」
社員15人のスタートアップで営業マネージャーをしていたとき、案件管理はGoogleスプレッドシートだった。最初は問題なかったが、案件が50件を超えたあたりから「あの案件どうなった?」「先週のフォローアップ誰がやった?」が頻発するようになった。
CRM(顧客関係管理)ツールの導入を決めたが、Salesforce、HubSpot、Mazrica(旧Senses)と選択肢が多すぎて判断できない。3つとも無料トライアルを使い、2ヶ月かけて比較した結果をまとめたのがこの記事だ。
結論から言うと、中小企業(50人以下)ならHubSpotの無料CRMから始めるのが正解。ただし、日本の営業文化にフィットするのはMazricaだし、大規模にスケールするならSalesforceしかない。
3社の基本情報
| ツール | 月額/ユーザー | 無料プラン | AI機能 | 日本語対応 | 導入企業数 |
|---|---|---|---|---|---|
| HubSpot | 無料〜$90 | ◎(充実) | ○(HubSpot AI) | ◎ | 世界19万社+ |
| Salesforce | $25〜$300 | ×(30日体験のみ) | ◎(Einstein AI) | ◎ | 世界15万社+ |
| Mazrica | ¥5,500〜 | ×(無料体験あり) | ○(AI予測) | ◎ | 国内5,000社+ |
機能比較(7項目)
| 機能 | HubSpot | Salesforce | Mazrica |
|---|---|---|---|
| パイプライン管理 | ◎ | ◎ | ◎ |
| メールトラッキング | ◎ | ◎ | ○ |
| AIスコアリング | ○ | ◎ | ○ |
| レポート・ダッシュボード | ○ | ◎ | ○ |
| マーケティング連携 | ◎ | ○ | △ |
| カスタマイズ性 | ○ | ◎ | △ |
| モバイルアプリ | ◎ | ◎ | ◎ |
各ツールの強みと弱み
HubSpot — 無料CRMの充実度が異次元
HubSpotの最大の強みは無料プランでもCRMの基本機能がフルに使えること。コンタクト管理(100万件まで)、パイプライン管理、メールトラッキング、会議予約、フォーム作成——これが全部無料。
「まずCRMを体験してみたい」「予算がないけど営業管理を始めたい」という企業にとって、HubSpotの無料CRMは最適解だ。世界19万社以上が導入している実績は伊達じゃない。
有料プラン(Starter $20/月〜)に移行すると、マーケティングオートメーション(メール自動配信、LP作成、ワークフロー)が解放される。営業とマーケティングの連携を一つのプラットフォームで完結できるのは、HubSpotのユニークな強みだ。
AI機能は2025年から「HubSpot AI」として強化された。メール文面の自動生成、商談の次のアクション提案、ブログ記事のドラフト作成などが可能。まだSalesforceのEinsteinほどの成熟度はないが、中小企業には十分。
弱点は2つ。レポートのカスタマイズ性がProfessionalプラン($90/月〜)にならないと使えないこと。そして日本の営業文化(名刺管理、稟議フロー)への対応がやや弱いこと。
私がHubSpotを使い始めたとき、最初に困ったのは「名刺交換した相手を登録する」フローだった。Sansanのように名刺をスキャンして自動登録する機能がないため、手入力になる。ここはMazricaのほうが日本の営業現場に合っている。
Salesforce — カスタマイズ性と拡張性はNo.1
世界シェアNo.1のCRMプラットフォーム。あらゆる業種、あらゆる規模の企業に対応できるカスタマイズ性が最大の特徴だ。
Einstein AIは2026年時点で最も成熟したAI営業支援機能。商談のスコアリング(成約確率を0〜100%で予測)、次のベストアクション提案(「この顧客には今週中にフォローアップすべき」)、データ入力の自動補完まで、営業パーソンの「次に何をすべきか」を具体的に教えてくれる。
AppExchangeというマーケットプレイスには数千のアプリが公開されており、請求管理、ドキュメント生成、チャット連携など、必要な機能を後から追加できる。
ただし中小企業にはオーバースペック。初期設定にIT知識が必要で、導入コンサルを入れると初期費用が100〜300万円になることも珍しくない。月額も$25/ユーザーからで、10人のチームだと月$250(約37,000円)。年間44万円のコストだ。
正直に言うと、社員30人以下の会社がSalesforceを入れるのは「F1カーで近所のスーパーに行く」ようなものだと思っている。機能は素晴らしいが、使いこなすためのリソース(人材、時間、費用)が必要。
Mazrica(マツリカ) — 日本の営業現場に最適化
日本企業が開発したSFA/CRMツール。日本のビジネス慣行(名刺管理、案件ボード、日報連携)に最適化されたUIが特徴。
案件ボード(カンバン方式)が直感的で、ドラッグ&ドロップで商談のステータスを変更できる。ITに慣れていない営業メンバーでも「見ればわかる」UIだ。
AIによる案件の受注予測機能があり、過去の商談データから「この案件の受注確率は○%」と表示される。営業会議でこの数字をもとに「注力すべき案件」と「見込みが薄い案件」を仕分けできる。
名刺のスキャン取り込みに対応しているのも、日本の営業現場では大きなメリット。展示会で交換した名刺をスマホで撮影→自動でコンタクトに登録、というフローが自然にできる。
弱点はカスタマイズ性の低さ。Salesforceほどの自由度はなく、「Mazricaが想定している営業フロー」に合わないと使いにくい。また、マーケティング機能は弱い。
月5,500円/ユーザー〜。10人のチームで月55,000円。Salesforceより安いが、HubSpotの無料プランと比べるとコスト差は大きい。
企業規模別のおすすめ
| 規模 | メインCRM | 理由 |
|---|---|---|
| 1〜10人 | HubSpot無料 | コストゼロ。機能制限なし |
| 10〜30人 | HubSpot Starter or Mazrica | HubSpotはコスパ、Mazricaは日本の営業文化 |
| 30〜100人 | Mazrica or Salesforce | 規模に応じた拡張性が必要 |
| 100人以上 | Salesforce | カスタマイズ性とスケーラビリティ |
導入で失敗しないための3つのコツ
コツ1: 「全機能を使おう」としない
CRMの失敗で最も多いのが、最初から全機能を使おうとして現場が混乱するパターン。まずは「案件のステータス管理」と「顧客情報の一元管理」の2つだけに絞って始めよう。
コツ2: 営業マネージャーが率先して使う
現場の営業メンバーだけにCRMの入力を強制しても、3ヶ月で使われなくなる。マネージャー自身がCRMのデータをもとに会議を進め、「CRMに入力しないと情報が共有されない」環境を作ることが大事だ。
コツ3: 入力の手間を最小限にする
営業メンバーが最も嫌がるのは「入力作業」。メール連携やスマホアプリからのワンタッチ入力など、入力の手間を減らす機能を最大限活用する。
まとめ:迷ったらHubSpot無料から
CRMは「高機能なもの」ではなく「使われるもの」を選ぶべきだ。
- まず試したい → HubSpot無料CRM
- 日本の営業文化に合わせたい → Mazrica
- 大規模にスケールしたい → Salesforce
どのツールも無料体験があるので、まずは1ヶ月使ってみて「営業チームに合うか」を確かめよう。
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